当ブログについて


約10年の東京生活を経て、2014年に兵庫県神河町の長谷(はせ)地区に移住。

NHK大河ドラマ『軍師官兵衛』映画『ノルウェイの森』等のロケ地にもなった砥峰高原の麓に位置する、高原の空気と水に恵まれた小さな村で暮らしています。

そこに遺された妻の祖母宅にて暮らす中で日々起こるできごと、かつての日本の暮らしを垣間見て気づかされることを綴っていけたらとブログを開設しました。

母屋外観
受け継ぎ暮らす築170年超の母屋
事務所兼コワーキングスペース


なぜ今、わざわざ「俳句ブログ」なのか。

生成AIの進化によって、いまや言葉は一瞬で、大量に、そしてそれなりの完成度で自動生成できる時代になりました。

2010年代の後半から、AIによる文芸創作の可能性は注目されていましたが、まだ「見て見ぬふり」ができた気がします。その頃から少しずつ不気味な脅威と虚無感を覚え始めていたものが、2023年、対話型AIの登場によっていよいよ人間と同じ目線の高さに現れ、同じ土俵に乗るように。そしてついに、AIとの判別の難しさを理由に、長年続いていた文芸コンテストが中止・終了になる事態まで起きています。

文字列としての作品の「オリジナリティ」を証明することは、かつてないほど難しくなりました。ここ数年で起きたことは、書き文字によって作家性を証明するという、あらゆる文芸の大きなターニングポイントであり、ひとつの歴史の区切りであると感じています。

効率やスピードを求めるなら、人間がわざわざ悩みながら言葉を紡ぐ意味は、もうないのかもしれません。

ですが、だからこそ私は、その逆を行ってみたいと思っています。

伝統的な俳句の世界では、作品の自己解説は「野暮」あるいは「御法度」とされてきました。そのマナーに従い(ときどき逸脱しつつも)、このブログ「原点諧記(げんてんかいき)」は、当初は田舎暮らしのエッセイと俳句作品を並べ置き、鑑賞は読者に委ねるスタイルで続けてきました。

ただ、時代がここまで変化した以上は、完成した17音の俳句をただ置くだけでなく、その一語に至るまでに「どのように迷い、悩み、言葉を削ったのか」という思考の軌跡や、着想の背景にあるエッセイを、そのまま開示していくことこそがリアリティや価値を生むのではと考えるに至りました。

ビッグデータの収集と配置では決して真似できない、割り切れない「生身の人間のドキュメンタリー」の中にこそ、これからの言葉の、そして表現の美しさが宿るのではないかと考えています。

私にとっての「原点」は、俳句だけではありません。

神河町の土に触れ、季節の移ろいと共に生きる「暮らしの原点」。
歴史の重みを感じる家屋を受け継ぎ、場を営み、地域の仕事に伴走しながら本質的なつながりを作る「社会の原点」。

あらゆる活動の起点にある「人間らしい原点」を、言葉のユーモアや調和(=諧)とともに記録していく。そんな、ちょっとマニアックで、手間のかかる実験の場です。

都会と地方を、行き来して。

デジタルとアナログを、行き来して。

一人の俳人が、そして言葉を扱う生業を選んだ人間が、日々どんな風に世界を観察し、言葉を産み落とし、削ぎ落としているのか。

日々の余白の中で、のんびりとお付き合いいただければ幸いです。

2026年5月
山口貴士


著者紹介

profile

山口 貴士(やまぐち たかし) 

1984年 兵庫県姫路市生まれ。早稲田大学大学院 教育学研究科修了、専門は江戸の初期俳諧。総合広告会社を経て、2014年 結婚を機に兵庫県神河町へ夫婦で移住。事業と暮らしを営みながら、創作活動に取り組む。ヤギ一頭と二児の父。

 -第五回芝不器男俳句新人賞(2018年)
  最終選考候補作品100句

 -第4回新鋭俳句賞(2020年)
  最終候補作品30句