音楽との関わり方は、一様ではないのだと思います。
意外な形で妻がソロデビューしました。
新境地。老人ホームの慰問コンサート
大々的にアナウンスはしていませんが、山口夫婦の音楽制作ユニットcanorusは現在活動を休止しています。
音楽。
お互いに、ルーツであり、ライフワークであり、強い思い入れがあるのは確かです。
それだけに、表現者としてステージに立つならば、音楽を愛する人間として納得できるパフォーマンスをしたいと思います。
しかし、仕事や各方面の活動が広がってくるにつれて物理的に限界も感じるようになり、、
「中途半端に続けることはできない」
苦渋の決断で、活動を休止。
本当に心苦しいことでしたが、オファーを頂いていた姫路のライブサーキット『サウンドトポロジー』も辞退。
二人とも、しばらく人前で演奏することはないだろうと思っていました。
ところが、思わぬところがお誘いが。
出演オファーの主は、町内の特定養護老人ホーム『うぐいす荘』。
昨年のホテルモンテローザでのXmasライブをご覧になった担当者さんがご指名くださったのです。
canorusとしても、経験したことのないケース。
ストレートにお断りするのもためらわれるところです。
なんとなくわたしには、妻が一人で歌っている姿がイメージできました。
「奈央さん、ひとりでやってみたら?」
「ええっ、できるやろか・・・」
「山口奈央」初のソロ出演が決定しました。
施設の雰囲気を考えて、曲目はオリジナル曲よりもカバー曲中心に。
それも、世代を越えて口ずさめるもの。
「ふるさと」
「線路は続くよどこまでも」
「蛍の光」
日本人なら誰もが耳にしたことのある歌を、ごくごくシンプルなアレンジで奏でる。
方向性は明確でした。
音声をお伝えできないのが残念ですが、心配をよそに、当日は手拍子や合唱入りの一体感あるひとときに。
(「今回だけお願い」と言われ、音響スタッフ兼マネージャーとして同行しました)
施設のスタッフさんが雰囲気づくりをしてくださり、最後にはアンコール。
この日2度目の演奏となった「ふるさと」では、涙を流されるお姿も。
妻の歌にも、いつになく想いが込められているように感じられました。
”クリスマスライブ”だったため、妻もサンタさんになってお菓子を配る一幕も。
閉会をお知らせして、スタッフさんと共に妻もみなさんをお見送りしました。
「ええ歌でした」
「ありがとうね」
「ご苦労さん!」
気づけば、握手を求める車椅子の列。
余韻に浸りながら、施設をあとにしました。
まさに新境地ながら、まるで昔からのライフワークのようにも見えるコンサートでした。
カバー曲群に織り交ぜられたオリジナル曲は、また趣きも新た。
「道なき道をゆく あぁ こわいなぁ」
そんな歌詞で始まる「旅の行方」が、ひときわ味わい深く感じられました。
今日の一句
残声の 童謡聞こゆ 年の内
ざんせいの どうようきこゆ としのうち
季語:年の内(冬)
お一人おひとりが人生の経験と重ねながら合唱される、日本の歌。
年の瀬の気配をよそに、施設はあたたかい空気に満ちていました。