先日、妻と二人で、姫路文化センターにて『松竹大歌舞伎』 市川亀治郎改め四代目市川猿之助さんと九代目・市川中車(香川照之)さんの襲名披露を観てきました。
今を時めく人気役者さん達とあって、約2000人収容の大ホールは完売!当日はすごい人だかりでした。
演目は、以下の通り。
第1部:中車さんの『小栗栖の長兵衛』
第2部:襲名披露
第3部:猿之助さんの『義経千本桜』
1部の中車さんによる『長兵衛』は、現代ことばによる人情劇。村のお荷物だった異端児が、天下の敵・明智光秀を竹槍で討ち取り一躍ヒーローになるというストーリーです。現在放映中のNHK大河ドラマ『軍師官兵衛』に所縁のある姫路においては、タイムリーな演目でした。(『軍師官兵衛』のオープニングで映し出されるススキは、神河町の砥峰高原で撮影されました!)
歌舞伎の「間」
そして3部の『千本桜』はいわゆる「歌舞伎」。猿之助さんのアクロバティックな身のこなしや、『澤瀉屋(おもだかや)』ならではという派手な舞台仕掛けもあり楽しく鑑賞しましたが、現代の感覚で観ると、なんとも不思議な世界です。ひとつひとつの所作がゆったりと遅く、「間」が尋常でなく多く感じられます。
これは、人物の葛藤や心情の推移がその「間」をもって表現されているからだそうで、「余白」を味わう芸術、という側面が強いのだと思います。
googleやNAVARまとめを覗けば「入門ガイド」から「業界裏事情」までありとあらゆる情報がすぐ簡単に手に入り、”ブラックボックス”が無いと言われる今の時代。時間的、精神的「余白」を感じることは少なくなっているかもしれませんね。
今日の一句
草喰らふ 牛の口元 秋来たる
くさくらふ うしのくちもと あききたる
季語:秋来たる・立秋(秋)
初案は、「草喰らう牛のスピード秋来たる」。
秋の訪れは、ある日突然ではなく、フェードインする音楽のように、うつろいながらやってくる。そのゆるやかなスピードは、目の前の、ゆっくりゆっくりと反芻しながら草を食べる牛の動きと響き合うようだなぁという実感から。中七には、普通は「速い」場合に用いる「スピード」という単語をあえて使用してみました。
これを句会で提出したところ、先生から添削いただいたのが、「牛の口元」。私が表現したかった「スピード感」が、直接そう表現しないことでより際立ったことに感動しました。
あえて表現しないことで、想像がふくらみ、そこに豊かな心象風景が立ち現れる。そんな直接的でない美しさの表現に私は尽きない魅力を感じます。
蚊の地域性?
ところで、今回姫路に帰って驚いたのが、蚊のスピードです。
長谷の蚊は「ブ~ン」と大きな音を立てながらゆったり優雅に飛んでくれるので、最近は耳元の蚊をノールックで捕えられることすらありますが、姫路の蚊は、気配を殺しながら、しかもビックリするほどの速さで襲ってきます。おまけに腫れ方も派手。これには参りました。
人も蚊も、暮らす環境が変われば、体内時間や性質がだんだんと変わってくるのかもしれません。
いよぉォ~、シャン!(拍子木)