巌肌の飛沫を浴びる冬紅葉

長谷のディープスポット「足尾の滝」

日本には、自然の神秘ともいえる「滝」が沢山あります。栃木の『華厳の滝』、和歌山の『那智の滝』、そして長谷の『足尾の滝』などです。(もちろん冗談ですよ!)

実はすぐ近所なのですが、紅葉してからが見ごろと聞いていたので、紅葉するまで待っていました。念願の初訪問です。

【参考】冬に訪問された際の記事ですが、とても丁寧なレポートです。
滝めぐりシリーズ46 足尾の滝 兵庫県神崎郡神河町


お車での見物はご用心

「途中まで車で入れる」と聞いていましたが、実際行ってみるとかなりのダートです。先人が観光スポットとして整備してくださった跡はうかがえるのですが、登り始めるとすぐに、大きな岩や車にかぶさる松の枝など、あちらこちらにトラップが。

おまけに私達の通り道にはなぜかツノがないシカの頭がい骨が転がっていて、冒頭から不安な気持ちになりました。

元気があればオール徒歩をオススメします。

獣害対策の門扉が一応ありますが、カギは掛かっていません。都度閉めましょう。
獣害対策の門扉が一応ありますが、カギは掛かっていません。都度閉めましょう。

地味ですが、味のある滝です。

入り口のゲートをくぐってから、ドキドキハラハラの細道を車で登ってゆくと、5分ほどで滝への案内看板が見えてきます。一応「こっちですよ」的な矢印があるものの、「本当にこの先にあるの?」と思ってしまう飾り気のなさです。

看板左手の道から歩いて滝へ向かいます。
看板左手の道から歩いて滝へ向かいます。

しかし信じて歩くこと約10分。だんだんと水音が近づいてきて、ついに滝の姿が現れました。

「あれ?結構すごくない?」

というのが率直な感想。思っていた以上に、雄大で美しい景色でした。

高低差30mと、決して大きくはありません。また、幾重にも分岐している訳でもずらりと何筋も滝が落ちている訳ではありません。しかし、紅葉が岩肌と水面にしだれかかるような風情は、地元びいきを差し引いても、「美しい!」と思います。

水筒とクッキーを持参していましたが、「近所にこんな絶景があったとは・・・」と、つい飲食を忘れて眺め入ってしまいました。

手に持っているのが水筒で無ければ、まるでジャケ写のようです。
手に持っているのが水筒で無ければ、まるでジャケ写のようです。

今日の一句

巌肌の 飛沫を浴びる 冬紅葉

いわはだの しぶきをあびる ふゆもみじ

季語:冬紅葉(冬)

「なぜ俳人は、難しい漢字ばかり使うのだろう・・・」と私も最初思っていましたが、限られた字数の中に意味のレイヤーを重ねようとすると、「漢字」と「仮名」それぞれが視覚的に与えるイメージを無視することはできません。

今回も推敲の過程で漢字と仮名を行ったり来たりしましたが、何度も吟味していると、シーソーの動きがしだいに止むように、ひとつの形に落ち着きました。

ごつごつとそびえ立つイワは「岩」でなく「巌」。とめどなく、大胆に飛び散るシブキは、「しぶき」でなく「飛沫」

もちろん正解はありませんが、岸壁と滝の躍動を前にした感動を思い返すと、やはりこの選択しかないと思ってきます。(こんな調子なので、週2という更新ペースは結構ギリギリです・・・)


この流れで思い出したこと。

かの芭蕉は、弟子たちに対して「舌頭に千転せよ」、つまり句ができたら口に出して何度も何度も推敲すべしと教えています。

芭蕉自身、たとえば次のような「推敲」を行っています。

(推敲前)西東 あはれさおなじ 秋の風

(推敲後)東にし あはれさひとつ 秋の風

いちばんの肝は「おなじ」から「ひとつ」への劇的な置換ですが、「西風」とも呼ばれる秋の風をあえて「東」から詠み、更に「にし」と仮名にひらいたことで、日本の東西をおしなべるような、重心の低い「あはれ」さが醸し出されているかのようです。

17音という定型における「文字」の力を想います。

「・・・そんなんどうでもよくない?」と言われてしまうと、悲しいかな反論は難しいです

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