「犬塚」の由来
田舎に限りませんが、土地や神社仏閣の「名称」にはルーツがあります。
長谷郵便局の脇を登ったところにある「犬塚」という小さなお堂。その由来は、神河町中村の「播州犬寺」の伝承に紐づいています。
ざっくり言うと、
妻の不倫相手に殺されかけた枚夫長者という豪族が、愛犬2匹に助けられた。
↓
主人より先に世を去った愛犬たちのために、私財をなげうって伽藍を建立した。
というお話です。(歴史フリークに怒られそうな乱暴なまとめ方)
その事件後、行方不明になった1匹がここ長谷で見つかったことから、「犬塚」が建立されました。
ちなみに発見場所は川の中。
「犬、見っけたで~」ということで、今の「犬見川」の名前がついたそうです。
村の一大イベント「犬塚まつり」
犬塚では、毎年、この季節に祭りが執り行われています。
当番は集落持ち回りで、今年はわが大川原集落が担当。この役が回ってくるのは4年に一度ということで、「オリンピックと同じや」と多分10回は聞きました。
祭りの目玉は、こどもたちによる「奉納相撲」。
のぼりや照明、暖房器具のセッティングに加えて、土俵や御幣づくり等の準備もあり、
<前週>役員を含む6名で為信集落にて燃焼用の雑木を伐採→<前日>役員が下準備→<当日>朝9時に集落全員で設営
と、結構大がかりです。
今回、私は主に「ひっこ」の調達と照明設置を担当。
「ひっこ」というのは木を切る際にでるクズで、転倒時のクッションのために土俵の中と外に薄く撒きます。あまり厚くなると、滑りやすくなりかえって危険なので注意が必要なのだそうです。
村の行事は勉強のチャンス
本題と関係ありませんが、照明を柱にくくりつける時に手間取っていたら、「紐くくりつけたことも無いんかいな」と冗談で言われました。「まさか~」と思いつつ、実際あまり無い気がして、はっとしました。
チェーンソーによる木の伐採から鳥獣対策の金網設置まで、村の先輩方は本当に器用です。「もっと手や体を使って生活力を付けないあかんなぁ」と行事のたびに思います。
また、こうした村の行事においては、作業の合間合間が色々な田舎ノウハウや裏話を教えてもらうチャンスです。
今日は、ヒノキの群生場所を教えてもらったり、古文書サークルで研究をしている方から、今読んでいる鵜野金兵衛という大庄屋の御用日記(藩の記録帳)の面白さを聞いたりしました。(「二七を拝借」という記述があるが、これが何を指すのか分からない!等)
大盛り上がりの「奉納相撲」
相撲にはちゃんと「行司」がつき、性別年齢さまざまの15人ほどのこどもが、「はっけよい、のこった」の合図でぶつかり合います。中には、女の子に追いかけられて土俵際を走り回る男の子も(笑)
ちなみに1取組ごとにもれなくファイトマネー100円が贈呈される仕組みで、「大関」にはなんと2,000円。ご父兄も他人ごとではありません。
相撲の最中、私はビールやお菓子を配り歩いていました。すると、目ざとくお菓子を見つけた眼鏡の男子から「眼鏡のおじちゃん、ちょーだい」の声。
「誰がおじちゃんや!(そして君も眼鏡やないか!)」
と思わずツッコみましたが、私も来月には30歳。こどもたちからみれば立派なおじちゃんだと気付き、自分の大人げなさを恥じました。
今日の一句
其処此処に 知らぬ顔あり 夕焚火
そこここに しらぬかおあり ゆうたきび
季語:夕焚火(冬)
犬塚まつりは、大川原だけでなく長谷地区全体のお祭り。日頃なかなか出会うことのない、離れた集落の方や子育て世代のご夫婦との交流が新鮮でした。
土俵際で相撲を応援して、寒くなってきたら火の傍に戻って・・・というゆるやかな人の行き来が心地よく感じられる夕べ。主君思いの犬の物語は、今も村の傍らにひっそりと息づいています。
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犬見川のせせらぎは、長谷の暮らしの一部です。