石運ぶ二つの影や龍の玉


「猫の手も借りたい」と言って人に助けを乞うなんて失礼な話ですが。

頼もしい助っ人が現れました。


助っ人参上!

kajiyanoのオープン準備がいよいよ大詰め。

11月納品案件が重なったこともあり、瞬間風速的に限界を越えがちです。

夫婦で助け合うのが理想ですが、妻は妻でクラウドファンディングのリターン品づくり看板製作家事をこなしていてこれまたあまり余裕がありません。


シンプルに考えれば

「自分たちでこなせないなら、他人に頼む」

という選択肢が浮上してきます.

しかし、これはこれでなかなか難しいものがあります。

・事務所オープンの準備

→受発注管理や助成金など生々しいお金の出入りに関わることが多く、ひとには頼みづらい。

・本業で部分的にスタッフを雇う

→必要なスキルを持った人を探す難しさがある。

・農作業サポート

→「・・・!」

そう、(わたしたちのレベルなので)農作業ならば助けを借りやすそうです!


 

手伝っていただくからにはボランティアという訳にはいきません。

年間の農業関連所得はしれていますが(人件費を考えれば実質赤字)、山口家の生活がトータルでうまく回るのであればそれも良し。

と思ってみたものの、働きざかりの若者が田んぼの管理を人生の先輩に委託するというのもなかなかに気まずいものがあります。


そんなことを悶々と考え続け・・・

あるときふっとひらめきました。

 

「そうだ!家族にお願いしよう!」

 

まさに灯台下暗し。

遠くて近い姫路で暮らす弟という戦力をすっかり忘れていたのでした。


「神河の安心食材お土産と2食つき+薄謝」

という条件で無事に交渉成立。

貴重な休日を献上してくれることになりました。


 

兄と弟

集合の約束は朝10時。

トヨタのコンパクトカーから降りてきた弟は、襟付きシャツに白いスニーカーという出で立ち。

「え?まさかその恰好でやるつもり?」

「うん、まぁ汚れてもえぇ服やから」

湧き上がるツッコミの数々を胸にしまい、とりあえずわたしの作業着一式を貸与。

主な作業内容を説明して共同作業が始まりました。

(依頼内容:柚子収穫サポート、畦の内側をスコップで削る+平鍬で地面を掘り起こす、石の除去、石垣のツタ刈り)


わたし自身にとっても久々の「外作業の日」

気になっていた庭の掃除にも着手できました。

一斗缶でブロワーに混合油を入れていると、弟がぼそっとひとこと。

「まさか、兄さんが田舎で暮らすようになるとはなぁ」

弟からすると、東京で派手な暮らしをしていたイメージが強く、わたしがこの場所に腰を落ち着けていることを不思議に感じるようです。


「なるべく約束はしない」

というのがいつしか自分のポリシーになっています。

小さなところで言えば、良いお店だなと思っても「また来ます」とは言わない。

大きなところで言えば、「●年先にはこうなっています」とは言わない。

期待をさせて、残念な想いをさせたくないからです。

 

夫婦ともに住民票を移し、表札を構え、こんどは事務所を構えるうえに、年月とともに育っていく庭も持つ。

「将来」は誰にとっても不確定ですが、今向かっている方向は自分たちの人生にとって良い方向なのだと信じています。

 

弟との阿吽の呼吸(と弟も思っていてくれたら良いのですが)で、想定以上の仕事が完了。

次回の約束を取り付けつつ、有機野菜の盛り合わせを包みました。

困ったときに快く力を貸してくれた弟に感謝しながら、”山口家長男”の奇妙な歩みを想う一日でした。


今日の一句

石運ぶ 二つの影や 龍の玉

いしはこぶ ふたつのかげや りゅうのたま

季語:龍の玉(冬)

土を掘り起こしては、出てきた石を運ぶ兄弟。

畦ぎわに広がる「龍のひげ」のまん丸い実が、薄い夕陽を映していました。


兵庫県姫路市生まれ。早稲田大学大学院 教育学研究科 修了。専門は江戸の初期俳諧。 総合広告会社(博報堂DYホールディングス)を経て、2014年兵庫県神河町に移住。2015年起業。2020年より株式会社OFFICE KAJIYANO 代表取締役 俳句結社「姫路青門」所属

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