古(いにしえ)よりつづく民族の舞踊には、その土地ならではの息吹が宿っているといいます。
世界を旅しながら、民族舞踊や唄/音楽の神髄を探究している富木えり花さんというダンサーがいます。
驚きの再会。
「もし良かったら」
『楽や』の陽子さんから手渡された、「空と大地の間で」と銘うたれたイベントチラシ。
ゲストをみると、「富木えり花」の文字。
「え!?あの、えり花さんが神河町に!?」と、思わず二度見しました。
えり花さんは、わたしたちが所属する有志団体で企画した、宮古島に残る神歌をテーマにした映画『スケッチ・オブ・ミャーク』の上映会&ライブでご出演いただいた経緯があります。(2013年9月)
「祈り」をテーマにした即興演奏にあわせて披露された、自然の雄大さをしなやかに表現する踊りは、まさに圧巻。
アンケートでも「ダンサーのエリカさんが素晴らしかった」「世界で通用すると思います」「また観たいです」といった声がきかれ、すごいダンサーだなぁと惚れ惚れしていたら、なんと同い年。
現在は、ご主人とともに滋賀県蓬莱の湖と山のはざまに拠点をかまえつつ、世界中で活躍されています。
一度お会いしてからはFacebook上でのお付き合いだったのですが、いつしかこのブログの読者になってくださっていたようで、「山口さんの世界観が好きです」とコメントをくださった時は感無量でした。
そのえり花さんが神河町に来られるときいて、馳せ参じない訳にはいきません。
妻と、『楽や』さんの扉をくぐりました。
”鯛や平目が舞い踊る”
ライブは、アフリカ出身のマルチミュージシャンであるミロゴ・べノアさんとの共演。
バラフォンという木琴のような楽器や、店主の陽子さんが6月のさんきら蛍ライブで購入してくださった暁天さん作のカリンバ、ジャンベなどを自在に操るブノワさんに即興で呼応する、えり花さんの土着的かつ優雅な踊り。
時間を忘れて、ふたりが醸し出す世界にうっとりと陶酔してしまいました。
MCの中で印象的だったのが、「舞い」と「踊り」のちがいについてのお話。
諸説あるとしつつも例に出してくださったのが、昔ばなし『浦島太郎』に出てくる「鯛や平目が舞い踊る」のワンフレーズ。
それぞれ、どう泳ぐかイメージできますか?
鯛の泳ぎ方、つまり「舞い」はヨコの動き。
逆に、「踊り」はタテの動き。
そのふたつがあわさって、「舞踊」というわけです。
アフリカなどの堅い大地は、高く跳ぶような「踊り」に特徴があり、アジア圏にくると旋回するような「舞い」のニュアンスに。
「その土地の、大地の感触がおどりをつくる」のだそうです。
同世代の夫婦として。
ライブ数日前。
「せっかくお近くまで来られる機会ですし、よかったらさんきらにもお立ち寄りください」とメッセージを送ったら、「ご連絡しようかと思っているところでした~!」との嬉しいお返事。
ライブの翌朝、ご夫婦でお越しいただきました。
えり花さんは、前日のパフォーマンスとはうってかわって、上品ながらもラフな雰囲気。
4つ年下のご主人とは今回が初対面ですが、えり花さんのあふれ出るパワーをしずかに受け止めるような包容力を感じさせる方でした。
ここ最近、古民家が気になっているというえり花さん。
当日はあいにくの雨に見舞われましたが、「雨の苔庭も素敵」「じっくりとものごとを考えるのにすごく良いですね~」と大喜び。
土間を改装した上がり口や、母屋と離れをつなぐ廻り廊下、書院のつくり、庭園の古木など、ここならではの雰囲気を気に入っていただけたようで、「この場所で是非」と、来年ライブをしていただけることになりました(!)。
寡黙なご主人に「やっぱり古民家良いね~、次は古民家に住みたいね~!」とおねだり(?)する姿は、アーティストの顔とはまた違う、素顔のえり花さん。
いっしょにいると、パワーをもらい、また癒されるような、素敵なご夫婦と過ごす濃密なひとときでした。
このご縁をこれからも大切にしたいと思います。
今日の一句
舞踏家の大地にあそぶ素足かな
ぶとうかの だいちにあそぶ すあしかな
季語:素足(夏)
見慣れた『楽や』さんのフロアが広大なアフリカの大地と化すような、べノアさんの土着的なグルーヴと富木えり花さんの幻想的な舞踊。
ときに激しく、ときにやわらかく、その素足は大地と戯れるかのようでした。