たいまつを手に、田んぼのまわりを練り歩く「虫送り」。
神河町長谷地区の赤田集落で行われた行事に消防団員として参加しました。
虫送りとは何ぞや?
恥ずかしながら、今回参加するまで「虫送り」というものが何のために何を行う行事なのかがよく分かっていませんでした。
虫送り むしおくり
主に西日本に定着している行事で、イネの害虫(主にイナゴ)を火でおびき寄せて川へ追いやるという本来の目的に加え祭事としてのアレンジがなされて今の形となっているようです。
当日集まった赤田地区の村人は老若男女約50名。
若い女性や子どもの参加が多いのが印象的でした。
開会のあいさつののち、イベントの音頭を取る幹事より今回のポジション発表。
ずりしと重い大たいまつを運ぶ役のほか、のぼりや人型の藁人形を持つ役、太鼓役など主要な役が割り振られていきます。
その他の参加者は、竹製のたいまつを1本ずつ受け取り、火を灯して準備。
たいまつには灯油をしみこませた布が詰められており、炎が消えにくいようになっています。
昨今ほんものの火を見たことがないこどもがいると聞きますが、村の大人に見守られながら自分の手で火を管理するのは貴重な経験だと思います。
地域一体の風物詩
「いーねのむーしゃー、おーもやせ~ぇおーもやせ!」
「さーねもりゃ~ぁ、おーともせ~ぇ!」
太鼓を打ち鳴らし、こんな唄を歌いながら田んぼのまわりを進んでいきます。(正確ではないです。ご了承ください)
「いーねのむーしゃー」→「稲の虫」は分かるのですが、どうして「実盛(さねもり)」が出てくるのか。
口真似をしてときおり歌いながらも、頭の中にクエスチョンマークが浮かんでいました。
調べてみたところ、実盛とはイナゴの隠語なのだそうです。
斉藤実盛
平安末期の武士。<中略>『満済准后日記』には応永21(1414)年に篠原で実盛の亡霊が出現したとの記事があり,種々の伝承が流布したようである。稲の株につまずいて討たれた恨みから害虫となり,稲を食い荒らすという伝承は,農村の年中行事(虫送り)と結びつけられている。(朝日日本歴史人物事典)
藁人形は、恨みを残してこの世を去った実盛への供養ということなのでしょうか。
ちなみにこの日の消防団員のおもな仕事は、ジェットシューターという水枕のようなものを背中に背負い、地面に落ちる火種をホースで消火すること。
この水袋がなかなかに重く、赤田の上り坂はちょっとした試練です。
休憩時にはみんな背中を丸めてぐったりしていましたが、赤田の女性陣お手製のおにぎりやジビエ料理が消防団員にも振る舞われ、
「うまっ!」
「これはありがたいわ~」
と笑顔が戻りました。
再開後は、県道を通過して河原へ向かう際の交通整理のほか最後の火の始末も消防の役目。
まさに地域が一体となって成り立っている行事だと感じました。
長谷消防団長谷チームにとっても、一年のハイライトのひとつ。
翌朝本村集落では8時~草刈り、わが大川原では8時半~電気柵まわりの整備という予定にもかかわらず、車庫では深夜まで盛大な慰労会が行われたのでした・・・。
今日の一句
顔伏せし 先陣の往く 虫送り
かおふせし せんじんのゆく むしおくり
季語:虫送り(晩夏)
大たいまつを持つ役目の人は、防火性のある頬かむりを被ります。
後続の動きを注意深く観察しながら、先導役がゆっくりと歩みを進めていきました。