迎春に向けて、村人総出で準備が行われました。
口伝の注連縄(しめなわ)づくり
私たちが暮らす大川原地区では、氏神様である大歳神社の注連縄(しめなわ)を隔年で作っています。
区長から作業スケジュールの説明がなされた後、「お前どうせ見たこともやったこともないやろ、よう見とけ」と言われ、先輩方の作業に入れてもらいました。
注連縄作りは、神社役員が自分の田んぼの藁を保管しておくところから始まります。
結い方の基本は、乾燥した藁を束にしてねじる→藁の束を指しこむ→ねじる、の繰り返しです。しかし要所で、折り返し方や力の入れ具合など特有のコツがあります。
神社役員でもある長老が「2年前にやったのに、どないしよったか忘れてまうもんやのう」と言っていましたが、伝承や記録が無ければ、本当にいつか途絶えてしまうかもしれません。
当人は、「10年先はワシらおらんから」と笑顔で言い放っておられましたが、本にもDVDにもなっていないノウハウ、少しずつでも記録していけたらと思います。
なぜ注連縄を張るのか
注連縄のルーツは、神話の世界。
天照大神が「天の岩戸」から出た際に、中に戻らないよう玉造命が縄を張って塞いだのが始まりとされています。”縄張り”ですね。(大相撲の横綱も注連縄の一種だそうです)
現在の神社神道においては、「ここから先は清められた神聖な場所」という一線であり、神の世界と現世を隔てる結界とも表現されます。
それを簡略化したものが、各家庭に飾られる注連(しめ)飾り。
家の中が清らかであることを示すとともに、「年神様」が間違いなく来てくれるための目印という意味もあります。
谷間の家さんきらのご先祖は、玄関や離れはもちろん、納屋や蔵などあらゆる入り口に注連飾りをしていたそうなので、年神様にとってはさぞ親切に映ったことでしょう。
今日の一句
長老の 注連綯う口の 一文字
ちょうろうの しめなうくちの いちもんじ
季語:注連綯う(冬)
永年にわたり受け継がれてきた年迎えの儀礼。
多くを語らぬ長老の作業姿は、静かにその重みを伝えるようでした。