沈黙の一座見廻す扇風機

はるばる東京より、経営コンサルタントの先生がご来訪。

その眼に映る、わが大川原集落の暮らしと環境とは・・・?


恩師、神河町へご来訪。

K先生は、誰もが知っている大手メーカー(複数)を担当している経営コンサルタントであり、税理士の顔もあります。

2年先まで予約が入り、基本的には紹介かお手紙でしか仕事を受けないという「売れっ子」。

そんな方が、なぜこんな個人事業主のもとに訪ねてきてくださるかというと、わたしの”同窓生”というご縁からです。

というのも、松岡正剛氏の営むオンライン学校『ISIS編集学校』の2008年度「守」コースを受講していたときのクラスメイトだったのです。

同校は、壮大なブックアーカイブプロジェクト「千夜千冊」などで知られる松岡校長を筆頭に、「情報」を「編集」する術を体系化するオンラインの学び舎。

図1

「守」コースは、約4ヶ月間。師範代の指南のもと、38のお題に対して「編集稽古」を掲示板上でたたかわせていきます。


メンバーの顔が見えるのは、最後の編集稽古を終えたあとのオフ会です。

「あー、●●(ハンドルネーム)さんって、あなただったの」

「回答から、おだやかな方と想像してましたよ~」

といった風に、頭の中をのぞいてからの種明かしのようでした。

その中で、教室でひときわ高いテンションで場を盛り上げていた「とーちゃん」ことK先生は、「とーちゃんですよね?」と満場一致でした。


運命の転機は突然に。

卒業(「卒門」といいます)後も、年に一度ほど交流が続いていましたが、少しずつ顔を合わせるペースが少なくなっていきました。

そんな中の、忘れもしない2014年4月。

わたしたち夫婦が神河町へ移住して、この古民家をゲストハウスにしようと考えていた時期です。

K先生へ結婚のご報告を兼ねてお電話した際に、「それはまた”物語”だね~、一度そっちいくよ」と言われて東京から本当に来られたのが運命の分かれ目。

「ここでなら二人の夢をかなえられるはず」

という直感とおぼろげな未来図しか持たなかったわたしたちのふわふわとした思考回路の根本からたたき直され、1年以上にわたり経営&営業指南にあずかることとなったのでした。

そこで身に付いた基本姿勢が、お客さまのために『谷間の家さんきら』をピカピカに磨き上げること。

今のさんきら夫婦スタイルへの道しるべを授けてくださった大恩人です。

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自然の「音」に価値がある。

K先生がこの季節に神河町へ来られたのは、今回がはじめてです。

わたしたちの暮らしが少し落ち着いてきたことに安心もされているのか、いつになくリラックスムードの時間が流れました。

朝から快晴だったこともあり、空気も清澄。

離れまで聴こえてくる川のせせらぎや鳥の声などの「音」に感激されたようでした。

K先生は若いころから3時間睡眠でOKという超タフな仕事人間ですが、「ここにいると、なんか良い感じにゆるんじゃうねぇ」と、今回は本格的な営業指南は見送り。オーダーメイドのリラクゼーションコースで日頃の疲れを取っていただくことになりました。

厳しいご指導を覚悟していたので、残念なような、ほっとするような気持ちになったのでした。


”自活”している集落のエネルギー

少運動がてら、リラクゼーションコースの前に村をぐるりとご案内。

明らかに物珍しげな視線があつまっていましたが、「東京からお客さんを案内しているんです」と声を張ると「そうかそうか」という感じで雰囲気が和みました。

東京の郊外で生まれ育った先生にとって、水田の風景などは見覚えのあるものですが、齢80を越える先輩が、バリバリ外しごとをしているのは衝撃的だったそうです。

暮らしているとついつい慣れてしまいますが、わたしたちも、移り住んだ当初は年齢の概念が打ち破られるような思いがしたものでした。


”田舎”は外から来た人に不審を抱きがちというイメージがありますが、先生いわく、「自活して、自分の生活を作っているからこその本能的な反応なのかもしれない」。

実際に村を歩いてみたことで、リアルな村の生活の息吹を感じられたのかもしれません。

来月には、奥さまと小学1年生になるご子息を連れて、谷間の家さんきらへ来られます。

テーマは、「田舎でしかできない修学旅行」。

僕が行ってみたいです。

ここでどんな「教育」ができるのか、じっくり考えてみようと思います。


今日の一句

沈黙の一座見廻す扇風機

ちんもくの いちざみまわす せんぷうき

季語:扇風機(夏)

座敷にて、田舎野菜たっぷりのそうめんを一緒に味わいながら、あれこれ語らう時間。

難題に対するしばしの沈黙のあいだにも、扇風機は同じ速度で首を振り続けていました。

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