風死してククレジャすっと倒さるる


「ククレジャ」を詠みたい!

※書き下ろし

W杯が終わりました。

まったくサッカーに詳しいわけではないですが、国を挙げてのお祭りや話題になりそうなドラマは仕事柄チェックしています。

今回、圧倒的な個の技術を結ぶ美しいサッカーで栄冠を手にしたスペイン。 大会MVPはロドリでしたが、実況や配信のコメント欄を見ていると「裏MVPはククレジャだった」という意見に異論は少ないのではないでしょうか。

稀代のユニークネスをもつククレジャという歴史に残る選手を、どうしても俳句に詠んでみたいという謎の欲求と数日間格闘しました。


思考と表現の軌跡①  「ククレジャらしさ」とは?

ククレジャといえば、まずはあの独特なアフロヘア。

「ピッチのどこにいても見つけられる髪型にして」

というお母さまからの要望がきっかけだったそうですが、あまりのしつこさにイライラした相手選手が掴む手綱になってしまうとは、そのときお母さんも想像しなかったかもしれません。

ただ、この路線は今ひとつ手応えがなく、容姿そのものよりも「ピッチ上での姿」にフォーカスすることに。

真っ先に浮かんだのが、あの特徴的な髪をなびかせながら、相手からファウルをもらうために「気をつけ」の姿勢のまま、棒のようにピッチへ倒れ込む姿でした。

「倒れる」というよりは、計算し尽くされた「倒される」。

脳の中で、メトロノームの針のように倒れるククレジャが音を立てました。


思考と表現の軌跡② 「風死す」を使う時が来た!

俳人には「自分にとって使いやすい季語」おなじみの季語とそうでないものがあります。

食べものでいうと、好き嫌いというよりは、アレルギー問題が近いか。うまくいった記憶のある季語はまた使いたくなるし、背伸びして使ってみたものの散々な結果になった季語は距離を起きがちです。

僕だけ?

そんなアレルギー季語のひとつが「風死す」

夏、風がぴたりとやんで、蒸し暑さが極まるさまを表す季語です。

何よりもまず、その響き自体がかっこよすぎると思いませんか?

ここに何をぶつけたらちょうどいい塩梅になるのか、自分には見えなくて、10年以上俳句を作っていて一回も使ったことがありませんでした。


「ククレジャが(ファウルをもらいにいって)ピッチに倒れる。」

俳句にしようと思ったときに、組み合わせる季語や背景の選択肢は無数にあります。

青い空が見えてもいいし、やや荒れた芝が見えてもいい。

でも、それだと他のスポーツ、シーンでも成立してしまいそうです。

いわゆる「季語が動く」という状態。

風景ではなく、コマ割りの漫画のような「間(ま)」が生まれるアプローチはないか。

ルーレットのように、「色なき風」「夕凪」といった透明感のある季語を脳内で回していたとき――

「風死す!」

ピタッと針が止まりました。

「風死すや」と切ってみようかと思ったけど、ぬるい風の残り香があの髪の毛にからみつくようなイメージで、「死して」「すっと」と紡いでみました。

怒り狂う相手に突き飛ばされたときの、あの”無”の表情が浮かんでくる、シュールな句になったかと思うのですが、いかがでしょうか?

こんな句、伝統的な句会で提出する勇気はありません。当ブログは私の独断と自己フィルターで創作しており、ご指導いただいてきた先生方にご迷惑をお掛けする予感しかなかったので特定の結社の名前は伏せて発信しております。

ククレジャを日本ではじめて詠んだ俳人として、ひっそりと歴史に名を残せれば光栄です。


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かぜしして ククレジャ すっとたおさるる

季語:風死す(夏)

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