猟銃の朧にひびく峡の里

田舎暮らしと獣害は切っても切り離せません。

昨年、わたしたちの畑もずいぶんと猿に荒らされましたが、お家によっては鹿の作物被害も大きかったといいます。

大川原集落には、獣害対策で山を駆けめぐる、頼もしいハンターが1人いらっしゃいます。


命をいただく

今となっては、「裏山で狩りをする」なんて、田舎で暮らしていてもなかなか想像しにくいものです。しかし、かつてはこの村でも、男衆で繰り出して、ヤマドリ(おそらくキジ)を追いかけていたそうです。

村の山持(やまもち)であったこの家の”おじいちゃん”は、「あっちに行ったぞ」「こっちに行ったぞ」と陣頭指揮を執っていたのだとか。

会ったことは無いけれど、何だか情景が目に浮かんできます。

おじいちゃん。
利夫じいちゃん

近年、”屠殺ブログ”『ちはるの森』で一躍有名になった畠山女史をはじめ、若い人がハンターに転職するケースやが増えているそうです。

幼少期からワイルドライフに夢中だったという妻と違い、少年時代、恥ずかしながらセミを素手で捕まえられなかった私。

獲物を撃ち(あるいは罠で仕留め)、絞めてさばいて、食べる・・・

「そんなこと、とても自分には出来ない」というのが30歳現在の本音です。

ですので、村の先輩方はもちろん、同世代でハンターとして活躍されている方々のことは本当に尊敬します。


以前、前述の畠山さんによるウサギ解体の記事がずいぶんと批判を浴びていましたが(あえてリンクは載せません)ペットで飼われている動物と食用牛、はたまた野草に”生物”としての上下があるのか、という問いは簡単には答えが出ないと思います。

ただ一つ確かなのは、わたしたちはなぜか食物連鎖の頂点に君臨して、肉を食べ、野菜を食べ、もっと言えば空気中の微生物を食べて、生きているということ。

その是非を問うなど人間にはおこがましいことで、心臓の前で手をあわせて、ありがたく「命」をいただくほかないだろうと思います。


猪肉の滋味

妻のご両親が一度食べてみたいとおっしゃっていたため、ハンターさんにお願いして、今回とくべつに焼肉用の猪肉を譲っていただきました。

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猪肉の中にもランクがあり、いわゆる「ぼたん鍋」用は脂身の多い上等の肉。焼肉用の肉はピンキリで、脂が多いものほど値打ちがあるそうです。

一度、村の集いで差し入れしていただいた時には塩麹に漬けてありましたが、今回のものは血抜きもしっかりとされていたようで、臭みもなく、あっさりとしながら深みのある味わいでした。

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自分ひとりでは決して得られない貴重な食物、美味しく頂きました。


今日の一句

猟銃の 朧にひびく 峡の里

りょうじゅうの おぼろにひびく かいのさと

季語:朧(春)

春の気配うるおう夜更け。

静寂を破る、「ズドーン」という猟銃の音。

そんな景が頭に浮かびました。

「朧(おぼろ)」とは、春深まる時節の、しっとりと水分を含む夜のありよう(”おぼろ月夜”といいますね)

実際の季節感、更には時間帯を考えると、この舞台設定はちょっと空想的といえるかもしれません。

ただ、先生曰く「俳句は『虚の実』、『実の虚』」

どうかご寛容に。

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