かねてから気になっていたまち。
徳島県神山町を見学してきました。
”創造的過疎”への道
地方創生の気運の中で、ひときわ注目を集めている自治体「神山町」。
2015年国勢調査によれば、人口は5,305人、高齢化率47%。
数字だけをみれば「よくある田舎」ですが、約20年に渡る革新的かつ地道な取り組みが実を結び、全国から人が集まる自治体となっています。
たとえば近年では、県内全域に光ファイバーが整備されていることも後押しして15社以上の企業がサテライトオフィスを構えるほか消費者庁の同町への移転も検討されています。
今回、神山町に興味を持つ姫路の知人らと10数名で同町を見学。
案内人は、約20年にわたるプロジェクトの核となってきた「NPO法人グリーンバレー」の現事務局長・竹内さん。
プロジェクトの象徴的な場所を案内していただきました。
里山を散策しながらアートに触れる「アーティスト・イン・レジデンス」。
東京本社のベンチャー企業「Sansan株式会社」のユニークなセカンドオフィス、民放関連会社のBCP対策(災害時バックアップ)を兼ねた「えんがわオフィス」をはじめとする「ワーク・イン・レジデンス」の一群。
会員制の山奥の図書館。
そしてNPO法人グリーンバレーの本拠地でもあり県庁職員のデスクも同居するコワーキングスペース「神山バレー・サテライトオフィス・コンプレックス」。
神山町プロジェクトは実に多岐にわたり、上記はその一端でしかありません。
カタカナが並び派手な印象を受けるかもしれませんが、見学を通して痛感したのは、まちづくりに近道はないということ。
ストーリーを紐解けば、地元PTAによる有志グループの発足がその始まり。
(興味のある方は、少し古いですが日経ビジネスの連載記事をご参照ください)
その後、いくつものターニングポイントを経て物語が動いていきます。
大きな転機となったのが、2007年に行政から民間組織「神山町移住交流支援センター」(のちのグリーンバレー)に移住相談窓口を委託したこと。
町長も「これが良かった」と評価しているそうです。
構造上致し方ないことですが、役場が主導で人や企業の誘致を進めていくと、公平性の担保のために面白い人、欲しい人の指名はできません。
しかし、民間主導であればまちに今必要なプレーヤーや店をセレクトして声を掛けていくことができます。
「パン屋さん開業しません?」
「デザイナーさんいませんか?」
それを積み重ねていくことで、言ってみれば町のデザインが可能になる、というお話はなるほどと思いました。
そんな神山町も、今後の全国的な人口減少の波には逆らえないと考えているそうです。
ただし町の魅力を高めることで減少カーブを緩やかにすることは可能であり、数ではなく中身を変えて人口構成の健全化を図ることで均衡の取れた持続可能な地域=” 創造的過疎”を目指すというのが神山町の構想。
兵庫県、また神河町では、今後どんなストーリーが待ち受けているのでしょうか。
今日の一句
積石の オブジェを揺らす 春嵐
つみいしの オブジェをゆらす はるあらし
季語:春嵐(春)
「創造の森」の中に設けられた、石を螺旋状に繋いだオブジェ。
逆風に耐えながら、過疎集落の挑戦が続いていきます。
(当日は雨まじりの嵐。しだれ桜が舞い散り愛車は桜の花びらまみれでした)