半月ほど前に、冬野菜の定番・大根を植えました。
前述の有機農業研修で、アブラナ科は競って育つため、ひとつひとつ植えるのではなく5粒ほど一緒に蒔き、芽が出たあと元気なものだけを残して間引くのが良いと聞いたので、その通りにしてみました。
このときに間引いたものが、「間引菜(まびきな)」と呼ばれます。
田舎の方からすると、「そんなことも知らんのかいな!」と言われそうですが、私は最近までその存在すら知りませんでした。なぜなら、スーパーで売っているところを見たことが無いからです(笑)都会の皆さんはご存知でしょうか!?
食べてみると、成長した葉よりやわらかく、浅漬けやお味噌汁の具としてよく使われています。間引き菜を食べられるのは農家の特権と言えるかもしれません。
※ちなみに大根の栄養は、白い根っこだけにあるかと思いきや、実は葉っぱにもたっぷりと含まれているそうです。ただ、傷みやすいこともあり、1本まるごとではあまり市場に出回っていません。
一方で、食卓にて、ふと思うのです。目の前の菜っ葉はいつから「間引き菜」なのか?
もちろん、種をまかれた瞬間ではありません。ひしめきあう隣の芽とにらめっこしているときでもない。畑の様子を見に来た主人が、周りと見比べて生育が悪いとみなした瞬間に、突如「間引菜」として生きることを余儀なくされるのです(育ち過ぎている場合にもそうすることがある模様)。
たまたま見る人が違えば、自分の限界まで精一杯大きく育ったかもしれません。そこはオーナーのさじ加減ひとつです。
今日の一句
間引菜や 名をば語らず 膳の添え
まびきなや なをばかたらず ぜんのそえ
季語:間引菜(秋)
「間引菜」。
よく考えたら、名前のようで名前ではありません。
植物だからもちろん言葉は発しませんが、食卓に並ぶまでの境遇を思えば、胸中を黙して語らずという昭和の日本男児のような佇まいに見えてくるではありませんか。
大地の恵みと先人の知恵に今日も感謝して。(合掌)