さみだれの一粒にある窒素かな

わたしたちが日頃気付きにくい自然の作用。

ときどき、米の気持ちになってみると面白いかも知れません。


”恵みの雨”のメカニズム

 

前回の記事では、「藻」やウキクサを利用し、深水管理を徹底する有機農業の方法論をご紹介しました。

 

その数日後のこと。

町内のある若手専業農家さんと出会いました。

コシヒカリ約15t、ニンニク約4tその他、わたしたちのような兼業農家とはスケール違いの量を生産されています。

 

規模が規模なので、当然求められるのは生産効率。

ただし、その方は食味や環境への影響も考慮して、有機肥料の活用方法など毎年仮説と検証を重ねておられます。

 

稲作における「保田式農法」も、有機農法の中のひとつのジャンルとして特色を把握されています。

 

「ぼかし肥料を入れるとどうしても土の中にガスが溜まるよね」

「確かに・・・!踏むとゴポゴポとガスが出ている感じがします」

 

「水を張り続けて、しかも藻がはると光が遮断されて酸素が欠乏するから、よう田んぼの中に入って酸素を入れたったらええんです」

「なるほど!」

 

「水は、溜めっぱなしにするよりもほんまは、酸素を含んだ新鮮な水と入れ替えてあげたほうが良いんやけどね」

「1滴も漏らすまいと溜め込んでます・・」

 

「藻は土の栄養になるとは思うけど、水中の酸素も取ってまうからね」

「ぎくっ」

 

「そもそも水面を遮るものが何もないのがイネにとったら理想やからね」

「・・・」

 

要は「酸欠注意」

田んぼに入れば入るだけ土に酸素が入るため、その意味で「ごぶり」も有効とのこと。

膝を打つことばかりでした。

 

結果することは同じでも、その作業が何をもたらすか知っておくことが、やり甲斐にもつながるかもしれません。


ちなみに昨今の雨は酸性のため、土が酸性に寄りがちなのだそうです。

 

「pHが酸性寄りになっている意識で、肥料設計を考えるとええよ」

「なるほど、この辺り(長谷)は雨が多いですしね・・・」

「ただ、雨には空気中の窒素(栄養)も含まれてるからね」

「へぇ!」

「雨が降ると、雑草がよう伸びるでしょ」

「確かに!」

「だから僕は、雨が降るとラッキーって思うんすよ」

 

最後に、嬉しいお言葉。

米づくりにおいては、水温が上がりすぎないことも大事。

それなら長谷は・・・?

「日照時間が長すぎず、水が冷たくて、県内でもええ環境やと思いますよ」

だから長谷のお米は美味しいのです!(断言)


今日の一句

さみだれの一粒にある窒素かな

さみだれの ひとつぶにある ちっそかな

季語:五月雨(夏)

水やりの手間が省けるだけでなく、空気中の栄養分が土に降り注がれることもあって「恵みの雨」。

夢があると思いませんか?

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